2013年12月31日火曜日

ティンプーの冬

ティンプーの冬はとても寒いです。

お風呂が大好きな私ですが、
我が家には残念ながら湯舟がありません。
でも有り難いことにお湯は蛇口から出ます。
ただし、45Lのタライ2杯弱分ぐらいしか出ません。
湯沸かし器の容量を超えると冷たい水に突然変わります。

最近?石鹸を使わない体の洗い方が注目を集めているとか。
私も同じ洗い方に変更する事に決めました。
ただし湯船につからず、かけ湯のみで同等の効果が
果たして期待できるのかどうか、、、?
当分は数日に1回は石鹸で洗ってしまいそうですが、
お湯の節約にはなりそうです。

今年も残すところ後わずかになりました。
今年も多くの人たちに支えられ、
ここブータンで何とか元気に暮らしています。

今年は、新しいカンガルーケアユニットの立ち上げや、
乳児健診&母乳育児外来の整備、ハイリスク児フォローアップの立ち上げ等等
どれも小さな一歩ばかりですが、これからも赤ちゃんのために
着実に進んで行きたいと思います。

皆様、どうかくれぐれも良いお年をお迎えください。

2013年11月17日日曜日

World Prematurity Day (世界早産の日)2013

毎年11月17日はWorld Prematurity Dayです。


2012年にWHO(世界保健機関)が発表した報告書
Born Too Soon- Global Action Report on Preterm Birth によると、
毎年全世界で1500万人の早産児が誕生しており、
その数は全出生数の約10%を占めています。

つまり赤ちゃん10人のうち一人の割合で、
早産児が生まれている計算になります。

早産は世界の新生児の死亡原因で最も多く、
こどもの死亡原因でも肺炎についで第2位を
占めている深刻な問題です。

早産が、物質的にも人的にも恵まれた
先進国だけの問題では決してないことは、
言うまでもありません。

ブータンでも、約10人に一人が早産で生まれますが、
1ヶ月未満に死亡している赤ちゃんの約半数が早産児です。
このように早産である事自体が、赤ちゃんにとって
生命のリスクに直結するのです。

よって、このWorld Prematurity Dayは、
早産の予防と早産児合併症の対策を推進するために、
世界中でその重要性を確認し合い、
関心を集める目的で設定されました。

ブータンではこれまで、この日が大きく取り
上げられる事はありませんでしたが、
今年から我々の病棟の看護師さんに主体となってもらい、
イベントを何かやろうと持ちかけました。

結果、今年はNICUを退院した患者さんとそのご家族、
そして現在NICUに入院している患者さんのご家族を
橋渡しし、交流を深めてもらおうと、ささやかな
合同ティーパーティーを病棟の隅っこで開くことにしました。

このような会は、日本のNICUでは行われているところも
あるでしょうが、ブータンではこれまで
余りなされて来ませんでした。

しかし、このような機会は、
現在NICUに入院している患者さんの家族にとっては、
ピアカウンセリングにもなりますし、
働いているスタッフにとっても、
すくすく成長する卒業生の姿を見る事は、
励みにもなりますし、自分たちの仕事の重みを
再認識するきっかけにもなります。

何でもこの日のテーマカラーは「パープル」だそうで、
みんなでNICU中に「パープル」の風船を飾り付けしたため、
大人も子どもも大喜びでした。

折角の良い機会ですので、
これからも毎年、すこしずつバージョンアップしながら、
続けて行きたいと思います。









2013年10月27日日曜日

円座物語

日本では、産後のお母さんと赤ちゃんは
大体1週間前後入院していますが、
ベッドが慢性的に足りないブータンでは、
産気づいた次の人にベッドを空けなければならないため、
早ければ6時間程で退院を余儀なくされます。

まだまだお母さんも赤ちゃんも
自信を持って退院できる状態でないこともあり、
お家に帰った後も母乳育児がうまく行かなかったり、
赤ちゃんが黄疸になったり、脱水で熱を出したりと、
様々な理由で私の働く新生児病棟に再入院となる事も
しばしばです。

今回も産後間もなく退院した赤ちゃんが、
新生児黄疸になって帰ってきました。

ところが、ついさっき入院したばかりなのに、
お父さんが、こう言います。
「先生、どうか退院させて下さい。
妻はお産の傷が痛み、具合が悪く、座る事も出来ません。
赤ちゃんには日光をあてて、
祈祷師にお祈りをしてもらって、
何とか家で治すように頑張りますので、
どうか退院させて下さい。」

新生児黄疸とは、光線療法という光を当てる治療をしないと、
ビリルビンという脳にとって有害な物質を身体の中から
取り除く事ができず、ひどくなると脳の発達に影響が出る
可能性のある深刻な問題です。

しかし、いくら説明してもお父さんは、
妻の事が心配でなかなか聞き入れてくれません。

そこでふと、一緒に働いている青年海外協力隊の
日本人の看護師さんから聞いた話が頭をよぎりました。
日本の産科病棟では、傷の痛む産褥婦さんのために、
円座(ドーナッツ型のクッション)を使っているが、
椅子もままならないブータンでは、産後の身体で固い地べたに座るのは、
さぞかし辛かろうというのです。

そこで、その話しを聞いた時に、早速日本から取り寄せておいた、
空気で膨らむ円座をそのお母さんに渡してみました。

「これをちょっと試してみてください。それでも辛かったら
何か他の方法を考えます。」

すると、円座の上に座ったとたん、
痛みで歪んだお母さんの表情がみるみる和らぎ、
「これなら大丈夫。」といって、
あっさり入院治療を継続する事に同意してくれました。

恐るべし、円座のパワー。
本当にちょっとした些細な事ですが、
日本の看護師さんの知恵と、お母さんへの思いやりの看護が、
ブータンのお母さんにも届いた瞬間なのでした。






2013年9月15日日曜日

初めてのティンプー・ツェチュ(アツァラについて)

ブータンに来て早2年と4ヶ月が経ちましたが、
今年はじめて一年に一度のお祭り・ツェチュに行くことができました。

毎年ブータン各地で地元のツェチュが行われますが、
ティンプーは9月のこの時期が通例で、
何日も前から祭りのために僧侶達が
特別なお祈りを重ね、
祭り期間中は祝日となり、
多くのティンプー市民、地方から訪れた人々、
そして観光客で賑わいます。

祭りの様子はテレビでも生中継されますが、
実際に祭り会場に足を運び、
その踊りを拝見、拝聴すると、
よりご利益があると言われるツェチュ。

マスクと色鮮やかな衣装をつけた僧侶、
そして熟練した舞踏家達が、
躍動的な踊りの数々を繰り広げますが、
そのすべてには宗教的な意味合いが込められており、
集まる人々に仏の教えをリマインドするという重要な役割が、
このお祭りにはあります。

そのお祭りの中で重要な役割をするのがアツァラ。
赤いお面を着け、ポーと呼ばれる魔除けの男根を持ち、
コミカルな動きで客を笑わせるアツァラは、
一見、その佇まいから「道化師」と思われがちですが、
実はその語源は、サンスクリット語のアツァーリア(先生)
と言われており、言わば仏の教えを人々にわかり易く教える
ファシリテーターのような役割を果たしています。

アツァラは最初から最後までフル出場し、
全ての演目とその裏に込められた意味合いを深く理解し、
全ての踊りのステップを知り尽くしていなければなりません。

面白さだけでなく、体力、知力共にもとめられるそのアツァラの姿に、
「先生」のあるべき本当の姿を見たような気がしました。






2013年8月5日月曜日

世界母乳育児週間

毎年8月第1週は、世界母乳育児週間です。

赤ちゃんの健やかな成長と発達のために、
母乳育児はとても重要な役割を担っています。

例に漏れずブータンでも、母乳育児の推進は大きな課題の1つです。
幸いブータンでは、今もなお、母乳育児が自然な事、当たり前な事
であると認識されていることに変わりはありませんが、
時代の流れとともに、少しずつ損なわれかねない危機感も否めません。


特に、働くお母さんの母乳育児を支える体制がなく、
知識の不足や風習、そして近代化によって簡単に人工乳や哺乳瓶が手に入る
ことなども障壁のひとつとなっています。

このような状況下でも、母乳育児を推進して行くためには、
いったいどうすればよいのでしょうか。

今年も世界母乳育児週間を機に、社会の関心を高めるため、
ブータン保健省並びにブータン国営放送、
ブータン人小児科医と協力して、
様々なイベントを企画しています。

まず、今年のテーマである「Breastfeeding support; close to mother
にちなんで、ティンプー市内に住む母乳育児を経験した母親を中心に
「母親サポートグループ」を保健省主導で結成しました。

自身の経験とセミナーで得た母乳育児に関する正しい知識をもとに、
これから母乳育児をしようとする母親のピアサポートをするのが狙いです。

メディアを通して、彼女達の活動を紹介することは言うまでもありませんが、
母乳育児に関する問題のみを出題し、母親達が解答者として参加する
クイズ番組を企画し、テレビ収録を行いました。
こちらも世界母乳育児週間中に全国放送する予定です。
 
病院でのケアの向上もいろいろ手がけています。
病院で出産した母親に向けた母乳育児に関するビデオ教材の開発、
退院後も母乳育児への継続的な支援を提供できるLactation Clinicの開設等、
限られた時間と人材をやり繰りして、何とか支援の向上をと、
保健省と緊密に連携を取りながら努力をする毎日です。

母乳育児には妊娠期を通じた、継続的な支援と社会の意識向上が不可欠です。
私の働く病院には、数えてみると母乳育児に関わる部門が何と9つもありました。

今年は、その全ての部署を巻き込んで、
一緒に世界母乳週間をお祝いをしたいと思います。

手始めに、看護師さん達と我が新生児病棟の入り口を飾り付けしました。


















千里の道も一歩から。

1つ1つの取り組みは小さくても、それがやがて大きな流れへと変わって
行くと信じて...   

2013年8月4日日曜日

インド名門医学校卒業生の同窓会

ブータンには医学部というものがありません。

よってこの国の全てのお医者さんは外国の医学部を卒業しています。
そしてその多くが、インドのとある医学校を卒業しています。
インド人でも入るのが難関といわれる名門校だそうです。


この医学校は最初の卒業生から数えて実に40年もの間、
毎年この国の生徒を受け入れてきました。

8月4日はその医学校の創立記念日。

毎年この日には決まって、この医学校の卒業生が
ブータン全土から集まります。

シニアの卒業生には、この国の医療を支えて来た重鎮たちも
含まれますが、35年前に卒業した人から、今年卒業した人まで、
老いも若きも、男性も女性も、皆集まって、
生時代の思い出話に花を咲かせたりして、
旧交を温めます。

昨年この会に、私も呼んで頂き出席しました。
「卒業生でもないのに、いいのかなあ」という懸念どおり
出席してみると卒業生でないのは私だけ。
しかもわたしは外国人。。。
でも、その懸念とは裏腹に、みんなまるで家族かのように
かく迎えてくれました。
そして、私が前例となって、次の年からは卒業生だけでなく、
その伴侶も呼びましょうということになりました。 

今年も例年のように、その会は開かれましたが、
伴侶がいても昨年までと同様に、卒業生達は、
臆する事なく飲んで、食べて、しゃべって、笑って 
そして踊りまくっての大はしゃぎ。

そして何と来年からは、子供、孫も呼びましょうということになりました。
さて来年はいったいどんな会になるのでしょうか。
どんどん広がる友達の輪、いや家族の輪。

恐るべし愛校心と、縦の繋がり、青春時代の絆の深さです。
でも、こういうのって何だかすごくいいなあって思いました。


看護師さん向け講義


私の勤めている病棟には、
新生児科医がわたし一人しかいません。
よって、日勤帯は私が毎日ひとりで患者さんの診療にあたり、
休日・夜間はブータン人の小児科医と交代で対応しています。

いつでも24時間必ず医師がいる日本のNICU(新生児集中治療室)
でもそうですが、こういう状況では、
医師がすぐ対応できるわけではないので、
それぞれのシフトに入っている看護師さんの観察力が、
ことさらとても大切になってきます。

よって昨年から少しずつ、
新生児によくある、特有の疾患の看護のポイントを、
病態生理の理解から、どういうことが予測され、
どういうところを観察し、どうなったら早めに
医師に知らせてほしいかを、
具体的にわかりやすく伝えるために、
毎朝看護師さんに1時間程で講義をしています。

余り知られていないかも知れませんが、
新生児期に特有の病気が、実は意外にたくさんあります。
例えば、胎便吸引症候群、壊死性腸炎、未熟児網膜症、
動脈管開存症などです。

看護師さんも足りないため、1回ですべてのスタッフを
カバーすることができません。

よって、同じトピックを2回、3回と繰り返し講義しています。

そしてその時、病棟にいる患者さんの疾患を、
なるべく扱うように心がけています。

最初は英語での講義、パワーポイント作成も一苦労でしたが、
今では随分慣れて、あまり苦に感じなくなってきました。

講義をする部屋は、病棟の倉庫を改造したにわか仕立てで、
窓もなくてそれはそれは窮屈ですが、それでも毎日、
新しい知識を吸収して、またはどこかでいつか聞いた事のある
知識でもそれを改めて思い出してもらい、
例え一ミリでもいいから前進し、
今日よりも明日の新生児ケアが、
よくなることを願って、続けています。




2013年6月21日金曜日

王様チームとのサッカー交流試合

写真がお見せできないのが残念ですが、
今日、王様チームと保健省チームで
サッカーの交流試合がありました。

突然のお達しにも関わらず、
大喜びの保健省役人達は、
お揃いのユニホームを速攻で準備し、
夕方のキックオフに備えます。

何でも、毎週金曜日は王様が、
各省庁の役人とサッカーするのが恒例だとか。

ようやく保健省の番が回って来たわけです。

ブータンで唯一の人工芝グラウンドで、
老いも若きも、雨の中を必死でボールを追いかける両チーム。

王様はフル出場。
シニアの役人達も、前半のみ出場しました。

王妃様も応援のためグラウンドにおみえになり、
お声をかけて下さりました。

一生の思い出になりました。